【御礼】第3回山結びフォーラム

過去最多のご来場者数で会場には熱気があふれておりました。ロビーには頼りになるボランティアスタッフとして山結び参加者の方々の顔が並び、SOMAと地球守の書籍やグッズ販売、アフターアワーでの歓談、子どもスタッフの募金活動などの新しい試みもフォーラムに花を添えてくれました。あらためて、ご来場の皆様、ボランティアスタッフの皆様、関係者の皆様、そしてご寄付いただいた皆様、支えてくださる全ての方々に心から感謝申し上げます。

フォーラムのテーマは「土木再考〜土と木とひとの関係を再生する〜」と銘打ちました。現代建築に生きる私たちの暮らしの中では、ひとと土と木の関係性が根本的に断たれていると常々感じていたからです。今回登壇された高田宏臣さんが、年始の能登半島地震を現地の8階建ホテルで被災された際のレポートを読むにつけ、今語るべきテーマであると確信しました。

対談に先立つオープニングトークでは、今日のテーマをより深く理解するためのキーワードをいくつか紹介しました。

「問題は環境から生まれる」

「自然環境の自治」

「観察・生態学的視点・美意識」

「滞りを解消する」

「強さとは何か」

「部分と全体」

これらを手がかりに高田さんとの対談『環境土木と出会う』へ移りました。

高田さんは、地形、土、地震とさまざまな事実と視座を提示しながら、より深く自然と向き合う姿勢について繰り返し問われました。なかでも地震による土地の液状化がそれまでの暮らしや文化を根こそぎ破壊してしまうことへの強い懸念をもち、特に能登半島地震では予想されていなかった場所で、それも広域に液状化が発生したことを憂慮されていました。液状化のリスクは、地中の水の動きが滞ることで増加します。水との付き合い方そのものが問われるのです。土木の造作を通じて、目に見える水だけでなく、目に見えない水とどれだけ呼応し合えるか。治水のあり方そして全体性を意識したこれからの建築や土木の考え方次第で、地震との付き合い方も大きく変わるであろうことが示されました。

春山慶彦さんを加えたパネルディスカッション『土木再興(どぼくをふたたびおこす)』は、「地域とは何か?」という春山さんの問いから始まりました。土地と生きるということ、その土地の文化や伝統を残す・思い出す・伝えることの意味を語りつつ、地形、地名、信仰、言語…三者三様の視点を重ねていくうちに、話は生きるということの精神性にまで及びます。空海や中村哲さんなど、土木を通して理想を現実に変えてきた偉人たちも登場し、多くの方に「土木」は希望であると思っていただけたのではないかと思います。高田さんと春山さんはこの日が初対面。この3人が揃って語らう場はこの日、このフォーラムが初めてでしたが、60分の予定を70分に延長してまで語り尽くした鼎談は、あっという間でした。3人の熱量を、ぜひアーカイブで感じてください。

山結びの活動を始めてから、「何かしたいけど何をすれば良いか分からなかった。具体的な行動を示してくれてありがたい。」と嬉しい言葉をかけていただくことがあります。私たちが生きて行くというのは、まさしく具体そのものです。生きるというのは、仮想現実の話ではありません。

自分の足で土地に立ち、土地と対話し、生かされる。

そして、自分の手で、土地に手を入れ、土地を生かす。

そのための具体的な一歩として「土木」は誰でもできる、間違いないものではないかと思います。

まずは、ご自分の身の回りの土を触ってみてください。

最後に、共に素晴らしい時間を形作ってくださった高田宏臣さん、春山慶彦さんへ、心からの敬意とともに感謝を申し上げます。


NPO法人SOMA 代表理事

瀬戸昌宣

#ひとが育つ環境をととのえる

「わたしは生まれる時代も場所も選ぶことができません。 その生まれ落ちた環境で、ただ精いっぱい育つだけです。」 ひとりひとりの「わたし」が育つ環境をととのえる、それがSOMAの仕事です。